意識障害の方へ気を付けておくべきこと

介護に役立つ医療知識

このブログでも書いていますが、私の場合,旦那が遷延性意識障害と診断をされています。

意識障害とはなにか?それによって起こるさまざまな弊害とはどんなものかをまとめてみました。

意識障害とは

意識障害とは、外界や内界からの刺激に対する反応の程度が低下あるいは消失した状態や判断力・記銘力・見当識に変化をきたした状態をいう。

アセスメント・看護計画がわかる症状別看護過程   照林社

ヒトの脳は《大脳》・《小脳》・《脳幹》の3つに分類されます。

脳のそれぞれの役割

【大脳】運動の命令や知覚、また思考や言語など人間らしさの機能

低酸素に弱い

【小脳】運動や姿勢の無意識的な調整

【脳幹】呼吸や循環の調節、また意識の伝達など生命維持に必要な

根本的機能 原始的な部分で比較的低酸素に強い

この3つの部分のどこに障害を受けたかで出現する症状は異なります。部位によっては生命の危機へ直結します。

またこの3つの部位で受けた損傷や失った機能のよって「全脳死」・「脳幹死」・「植物状態」に分けられます。

「全脳死」とは文字通り全部の脳が機能していない状態を指します。いわゆる「脳死」(→これは日本の法的な立場で国によって異なります)のことです。

「脳幹死」はその機能が奪われとものとしますが、「全脳死」と「脳幹死」は病態として一線を画す(※)とされています。

※一線を画すとは➡区切りや境界線を引くという意味

では「植物状態」とはというと、大脳の機能が完全に失われている・もしくはほとんど失われているを指し、小脳や脳幹は機能しているとされています。

意識障害の分類と原因

意識障害には大きく分けて2つに分類されます。

まず1つ目が「一次性中枢神経系ちゅうすうしんけいけい意識障害」と2つ目が「二次性中枢神経系意識障害」です。

それぞれについてまとめてみました。

一次性中枢神経系意識障害とは

脳そのものに原因があって起こるものをいいます。

頭部外傷や脳血管障害・脳腫瘍・てんかんなどです。

一次性中枢神経意識障害では意識のレベルはあまり変動はしなくてけいれんや振戦(震えのような症状)はあまりありません。

重症では呼吸異常や硬直(頭やお尻が反り身体全体が突っ張ったような状態)を伴います。

二次性中枢神経系意識障害とは

脳以外の臓器に原因があって起こるものをいいます。

循環不全や呼吸不全、糖尿病による昏睡、尿毒症・中毒(薬物やアルコール、一酸化炭素)・肝性脳症など。

二次性中枢神経系意識障害は一次性と違い意識レベルが良く変動したり、意識内容の変化を伴いやすいとされています。けいれんや振戦を伴いやすい。

遷延性意識障害は心停止や呼吸停止などによって脳への障害を起こすことによって起こるのでこの分類に入ります。

意識障害によっておこる弊害とは

意識障害がある場合、自分で体調の変化を訴えることができないためそれらをいち早くキャッチするのはとても困難と言われています。

例えば明らかに発熱しているやけいれんが出ているなどの他覚的症状であればわかりやすいですが細かい変化に気付けるのは普段から介護をしている家族の方だと思います。

意識障害になれば嚥下障害や排泄障害・廃用症候群・感染・前に紹介した褥瘡など細部にわたります。

皆さんも聞いたことのある症状についてもう少し細かく説明していきます。

嚥下障害によって起こる弊害

嚥下障害があるとどのような弊害があるのか?嚥下とは飲み込む動作を示します。この嚥下機能が失われたり障害を起こすと飲み込みが上手くできないために誤嚥して気管や肺に炎症を起こし誤嚥性肺炎を起こします。

嚥下障害は誤嚥するだけでなく、経口摂取(口から食べたり飲んだりすること)が困難となるため、長期に及べば栄養障害や脱水にもなります。栄養障害が長く続けば免疫機能の低下にもつながり、少しの傷や皮膚の状態が悪化することで感染を起こしやすくなったり褥瘡ができやすい状態にもなります。

また、肺の機能が弱くなることから咳き込む力が弱くなり痰を排出しにくくなります。痰の排出困難があれば上手く出せないことによる沈下性肺炎につながります。痰が詰まれば窒息し呼吸停止に陥ります。

窒息は痰が原因だけではなく舌根沈下によっても引き起こされます。意識障害があると自分で舌の動きをコントロールすることができないのでどうしても喉のほうへ(舌が)落ちやすくなります。

廃用症候群によって起こる弊害

廃用症候群とは「安静状態が長期に渡って続く事によって起こる、さまざまな心身の機能低下等を指す」とされています。

自分で身体を動かすことができないと、筋力も低下し筋肉が目に見えて少なくなっていきます。関節などは動かすことが少なくなると固くなりほっておくと拘縮してきます。

関節の拘縮は起こってしまうと元に戻すのは難しくなるので体位変換が難しくなり同一部位が圧迫されたりすることで褥瘡にもつながります。

筋力が低下することで転倒しやすくなるため、転倒したことによって骨折や転倒場所によって頭部への外傷も加わります。そうなればADLが障害されますます動くことを制限されるため機能はどんどん低下していくという悪循環になります。

廃用症候群になると使わない末梢の血管は血流が悪くなり、循環障害がおこり血栓ができやすくなったり血流障害がおこることで手先や足先の冷感が強くなります。またこの血流障害が長期になるとでも褥瘡につながります。

長期臥床によっておこるのは外部的なことだけでなく内部(肺や大腸など)にもわたり腸の動きが悪くなれば排便困難にもなります。

排泄障害によって起こる弊害

脳の損傷部位によっては排泄機能が障害され、尿失禁・便失禁・排便障害がおこります。

尿失禁の場合、おむつや尿取りパットを使うことで交換が不十分になると尿路感染を起こし発熱やひどくなれば他臓器にも障害を起こし生死にかかわってきます。

上記理由だけでなく、脱水になると尿量が低下し膀胱内に細菌がたまりそこからも感染が引き起こされます。

排便困難が長く続けば食欲不振になり食事量の低下→栄養障害へと関連していきます。それ以外にもガスや便が停滞することで吐き気や嘔吐を引き起こし、嘔吐よって誤嚥する危険性も出てきます。

感染によって起こる弊害

上記でもいくつか出てきた感染症状は比較的目に見えて発見できることのできる、一番最初に気付く状態変化と言えます。

感染は「した状態」と「しやすい状態→易感染いかんせん」に分けられます。感染した状態はすでに何らかの症状が出現しているため発熱や下痢、皮膚症状(発赤や湿疹など)として現れます。

しやすい状態いわゆる易感染とは容易に感染しやすい状況や状態を指しており、栄養障害がある、おむつを使っている、皮膚の状態が不衛生である、口腔内が汚れている、何らかの病気があるなど様々です。

意識障害の場合、この多くの易感染状態があるため常に感染の危険性はついて回ります。

まとめ

これまで読んでみてどう思われましたか?

意識障害によって引き起こされる弊害はひとつづつが単体ではないことに気付かれた方も多いとおもいます。その弊害の一つ一つがすべて関連付けられたものとなっています。

では、どうすればこの弊害をなくすことができるか?残念ながら全く無しにすることは難しいといえます。しかし、予防することはできます。

それが今まで紹介してきた「身体を清潔に保つ保清」・「体位変換」・「口腔ケア」・その他「適切な栄養状態」になります。もちろんこれ以外にも吸引が必要な方には適切な吸引方法も含まれます。

悪くなる前に気付くのが悪化させない一番の予防です。

普段介護をされている家族の方が感じる「なんか変…」や「いつもとちがう…」は、状態変化をいち早く察する感じる力なので(多くはその直感があってることは多いです。経験上)訪問看護師や訪問医師に相談してみてください。

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