意識障害の方と発熱の関係

介護に役立つ医療知識

意識障害があると意思疎通が困難であるため症状を早期に把握するには普段の身体状況をよく知っておくことが大事になります。

症状が早く分かれば重症化することも予防できるため、日常生活の中で身体の状態をよく観察しておきましょう。

発熱が起こる機序

前回「意識障害」について記載した時に、脳は主に3つから構成されていることをお話ししました。

医療関係者の方が見れば「ん?ほかにもあるぞ?」と思われた人もいるでしょうね。

解剖学的に言うと前回説明した以外に「間脳」というものも存在します。

障害を受けた部位でおこることを説明するために省略しましたが、今回は「発熱」について記載しているため今回は「間脳」について説明していきます。

「間脳」には《視床》と《視床下部》そして《脳下垂体》の3つから構成されていてそれぞれについては後述します。

間脳は字のごとくあいだの脳なので回りの脳への<連絡>と<伝達>の役割をしています。

そもそも<体温調節中枢>-体温をコントロールする部位-は視床下部にあります。

体温調節中枢では、一定の温度(セットポイント)が設定されています。病気などでこのセットポイントが急に高く設定されると体温が上昇します。これが「発熱」になります。

発熱することで悪寒や筋肉に震え(戦慄)がおこります。

視床

視床は運動機能を制御しているといわれています。嗅覚以外のすべての感覚が、ここを中核としての機能を持っています。

視床下部

視床下部は間脳の中で一番重要な働きをします。自律神経系の最高中枢であり、人間の本能と言われる食事や睡眠などをコントロールしているのもここになります。

最初のほうでも記載しましたが、視床下部は体温調節以外にも血圧や心拍数などにも働きかけます。

この事からもわかるように、低酸素状態で脳にダメージが加わると脳自体の働きが損傷されるため身体へのダメージはとても大きいものになります。

脳下垂体

下垂体からはいろいろなホルモンが分泌されています。今回は体温調整についてのお話なので詳細は省きますが、下垂体の部位によって成長ホルモンやメラトニンなどを分泌しています。

体温調節のメカニズム

ヒトの体温は常に一定ではなく変動しています。日内変動や季節によるもの、年齢や性差などです。

<日内変動>・・・夕方ごろから最も高くなって、深夜から明け方頃が最も低くなる

<季節変動>・・・5月~9月ごろが高く、11月~4月にかけて低いとせれている

<年齢差>・・・小児は高めであるが体温調節機能が未発達なのでいろんな環境を受けやすい。しかし高齢になると代謝の低下や循環不良などによって低くなる

このようにいろんな影響で体温は変化しやすい。

体温調節は視床下部にある体温調節中枢に伝達される情報に基づいて「熱放熱」と「熱産生」を促進・抑制しながら調整されています。

<放熱>・・・不感蒸泄や発汗など

<産熱>・・・基礎代謝や運動など(寒い時に震えるのもこれです)

発熱の原因

では発熱とは何℃以上をいうのでしょうか?

ヒトの平熱は大体36.0~37.0℃の間で測定する部分によって温度は違います。一番よく測定される腋下えきかいわゆるわきの下で測るとこんな感じです。

「平熱」は個人によって違います。普段の平熱が35.0℃前後の方であれば2℃上がった37.0℃でもやはりしんどさを感じ発熱になるので正確に何℃とは言えません。(※)

※一般的には発熱が37.5℃以上、38.0℃以上を高熱と言われていますが明確な基準はありません。

話が少しそれましたが、発熱の原因はさまざまな刺激によって異なります。

機械的刺激

機械的刺激とは脳血管障害・頭部外傷・低酸素脳症や脳腫瘍が原因で起こるものです。

出血や腫瘍などによる直接刺激や酸素不足などで体温調節機能が障害されます。

体温調整機能が損傷されてしまうと、セットポイントの移動がないため発熱ではなく高体温に属します。

科学的刺激原因

科学的刺激には感染症・悪性腫瘍・自己免疫疾患・外傷などが原因で起こるものです。

これらにて内因性の発熱物質が産生されて体温調節中枢が刺激されて発熱します。

その他

上記以外では<脱水>や精神的刺激(神経症など)でも発熱は起こります。

発熱時の対処法

発熱は身体を冷やすだけではいけません。今まで説明してきましたが、発熱は様々な原因で起こります。

発熱が長く続いたり、高熱が出たときには何らかの要因があります。意識障害の方は掛物をかけすぎてないか室内環境は適切であるか・水分は適切な量が入っているかなどを家族が調整する必要があります。

発熱や高熱が出たときは、「いつから熱が出たか?」・「熱以外の症状は出ていないか?」・解熱剤を使った場合は「何℃以上で使って何度まで解熱したか」を記載しておき訪問医師や訪問看護師に伝えてください。

この情報提供は医療従事者にはとても助かります。適切な内服をはやく処方をする手助けになります。

感染症などで発熱した時は、抗生剤を併用するときもあります。

熱が高い時は身体や頭を冷やす冷罨法というケアを行います。しかし、この冷罨法を行う時にも注意が必要です。意識障害の方は自分で動くことができません。なので当てる部位によって長時間同一部位に当たっていると【凍傷】を起こすこともあります。2時間程度したら皮膚表面に変化がないかを確認して下さい。

体温が高い状態が長く続くと、身体の水分もいつも以上に失われますので水分補給を多くしたりスポーツドリンクなどで補給することもお勧めです。(基礎疾患がある方は主治医へ確認してから使ってください)

胃ろう注入されている場合は麦茶に塩を足すのもおすすめです。

最後に

ここまで「発熱」についてまとめてみましたが、難しくなかったでしょうか?

意識障害の方を介護されている方は熱が出るとアタフタしてしまうと思います。そんな<アタフタ>に少しでも助けになれる内容になっていればと思います。

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